■はじめに

「葬送の自由をすすめる会」は二〇〇〇年のことし、発足以来一〇年目に入りました。二一世紀がスタートする二〇〇一年二月には、記念すべき一〇周年を迎えます。

 私たちが市民運動として「葬送の自由」を世間に訴えはじめたころ、海や山に遺灰を還(かえ)す「自然葬」は違法のように思われていました。私たちはそのタブーに挑戦したのです。

 一九九一年(平成三年)二月二日に東京で開かれた旗揚げ集会には、予想を超えて三〇〇人もの参加者が会場を埋めました。「こんなにたくさんの方が共鳴してくださったのか」と発起人一同、胸を熱くしたことは忘れられません。

 その年の一〇月、自然葬は節度をもって行う限り、関連する法律にふれることはない、との確信をもって相模灘で初の自然葬を行いました。これについてマスコミからの問い合わせに示された法務省、厚生省の見解は、私たちの主張の正しさを裏づけるものでした。この年を「葬送の自由」元年と私たちは呼んでいます。

 二〇〇〇年一月末で、「葬送の自由をすすめる会」は全国に一三支部、会員は八〇〇〇人を超え、実施した自然葬は三六八回、六六九人に上ります。自然葬の場所は、北海道から沖縄まで、海に山に空に、日本列島全域にわたり、インド、モンゴル、ハワイ、アメリカ東部など海外にも及んでいます。

 自然葬が広がる背景には、わが国が火葬率九九パーセントという世界一の火葬先進国であるのに加えて、万葉の昔から「自然に還る」という伝統的死生観があります。さらに今の社会がかかえる核家族化、少子化、高齢化などによる墓の守り手不在、墓地造成に伴う自然環境の破壊に対する批判、旧(ふる)い葬送習俗や葬式の商業化への不満などもあります。

 いま国民の七割が自然葬を認め、八人に一人が自然葬をするといっています。しかも若い人ほど自然葬を支持しています。

 一〇〇年といわずこれからの一〇年、世間の葬送スタイルは、大きく様変わりしそうです。「葬送の自由」と「自然葬」は、二一世紀に生きる人たちの合言葉となるでしょう。会の創立一〇周年を前に、これまでの歩みを振り返り、新しい出発のための足場を固める意味で、記念出版として本書を世に送ることになりました。

 会の運動に関心を寄せていただく方たちに呼んでいただければ幸いです。

 国際日本文化研究センター所長 山折哲雄
 葬送の自由をすすめる会会長 安田睦彦




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