防衛庁の「省」昇格と自衛隊の海外活動を「本来任務」に格上げする関連四法が二〇〇六年一二月一五日に成立し、「防衛省」が今年
(二〇〇七年)一月九日に誕生した。その直後の一二日に安倍晋三首相がNATO理事会で演説し、自衛隊の海外派兵を積極的に進める意向やNATOとの連携
を強化する方針を示した。また、三月に来日した豪州のハワード首相との間でも安全保障面での協力合意に達した。これらの一連の出来事は、世界の平和・安全
保障を米国が主導し、日本・欧州・豪州等が補完する形で取り仕切る体制がすでに出来上がりつつあることを意味している。9・11事件以後の米国は、グロー
バリゼーションで拡大した自国の国益確保(資源と市場の力による支配)を至上命題として、「新しい帝国秩序」の形成を目指す姿勢(「対テロ戦争」「予防戦
争(先制攻撃)」戦略の採用)を見せている。現在急速に進められつつある世界的規模での米軍再編は、こうした米国の新しい世界戦略との関連で位置づける必
要がある。
日本では、「米軍再編」を「基地の負担軽減と抑止力維持の均衡」という矮小化された構図でとらえ、単なる在日米軍基地の再配置計画であるかのような報道
が一般に見受けられる。しかし、そうした見方は、政府とマスコミが一体となった意図的な情報操作によるごまかしであり、事態の本質を見誤らせるものであ
る。憲法改悪のための国民投票手続き法案と政府の意向に「従う程度」によって交付金を与える米軍再編特措法案の今国会での成立が強権的に進められているよ
うに、米軍再編と憲法改悪はまさに連動しており、その背後には米国の強い意思が働いている。その共通の狙いが、海外での日米共同の軍事作戦を可能にするこ
と、すなわち日本社会の全面的改造による「戦時体制作り」にあることは明らかだ。「軍隊」ではない自衛隊を事実上「軍隊」として扱い、現在の政府解釈でも
できないはずの「集団的自衛権の行使」や「海外派兵」をなし崩し的に行う環境=有事体制が出来上がりつつある。
本書では、加速化する米軍再編の世界的背景とその本質的狙いとは一体何なのか、その中で日本は何を選択してどのような役割を果たそうとしているのか、を
明らかにしたいと考えている。また、過剰な基地負担と経済的依存に苦しむ沖縄をはじめ、在日米軍基地・自衛隊基地周辺の住民生活や自然環境への影響の実態
はどうなっているのか、日本政府が進める機密保護法制の強化や国民保護計画策定とその訓練実施によって日本社会がいかに変わりつつあるのか――といった米
軍再編に伴う様々な問題を、あくまでも地域住民や普通の市民の目線でとらえて問題解決の糸口を見いだすことを大きな課題としている。
本書は、米軍再編の背景とその意味を押さえた上で、沖縄の基地被害状況を起点に、佐世保から見える「戦争をする体制作り」、鹿屋での米軍空中給油機受け
入れ反対闘争、「岩国基地沖合移設事業」に揺れる岩国、「ヒロシマ」の基地群(呉と岩国)、神奈川(キャンプ座間・厚木基地・相模原補給廠)で進む基地強
化と立ち上がる市民、恐るべき侵略出撃拠点(横須賀基地)の実態、戦略的中継基地から日米の軍事中枢へ(横田基地)、と全国各地の基地をめぐる状況を市民
の視点で分析し、最後に再び沖縄から平和憲法の神髄を米軍再編との関係で問い直す構成となっている。米軍と自衛隊の一体化や(日本)本土の沖縄化が「日米
安保のグローバル化」の中で急速に進むと同時に、「前線基地」日本の実態、すなわち日本全体の軍事社会化・監視社会化がそれと表裏一対のものとして既成事
実化されつつあることが、本書全体を通じて具体的に明らかにされたのではないかと思う。
最後に、現在も戦場であるイラク・クウェートに派遣されて米軍への後方支援という形で「参戦」している航空自衛隊の即時撤退を強く求めるとともに、憲法
改悪や共謀罪創設等を通じて、日本を戦争国家・警察国家に造り替えようとするあらゆる動きを阻むために、一人ひとりの市民がいまこそ声を挙げて行動を起こ
すことを呼びかけたい。手遅れになったあとで後悔する、というかつて犯した過ちを再び繰り返さないためにも……。
二〇〇七年四月一八日
木村 朗
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