映画が語る 働くということ・書評



映画が語る 働くということ

『北海道新聞』
(06年3月19日「ほん」面「単行本」欄
『西日本新聞』
(06 年3月26日)「本と批評」面「新刊」欄

 若き日に住み込みや臨時雇いで職探しに苦労した著者が、映画に描かれた労働を語る。天職を全うする「鉄道員」、仕事で苦悩を克服する「クレールの刺 繍」、ドタバタ・ナンセンスが楽しい「釣りバカ日誌」…。労働の変化と本質、怠け者を許す会社共同体のよさまで視野に入れ、人生と働くことの意味を考えさ せる。 

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映画が語る 働くということ

『出版ニュース』
06年4月中旬号「ブックガイド」

 〈映画は、恋愛や戦争や少年非行や暴力団の活動や家庭の幸福は熱心に描くが、原則として、労働を描くことには熱心ではない〉〈私は、天邪鬼めくが、映画 にとって不得手な領域であるからこそ、映画に描かれた労働について語りたい〉古今の映画を素材に、仕事への愛着、共働き、サラリーマン、知的労働と肉体労 働、戦後民主主義、労働の神聖化、単調な労働と生甲斐、民族差別、天職、仕事の貴賤といった「労働」をめぐるテーマを映画批評家の視点から論じる。著者の スタンスが見える最終章では、戦時中の勤労動員から鉄道教習所を経て電気工事や電話機の修理などの仕事をしながら映画雑誌に投稿していた青春時代を振り返 る。〈自分の仕事に喜びを見出すようにしなければ人間の幸福はない〉と理想的な仕事のあり方を追求する姿勢は自身の下積み経験に裏打ちされているだけに、 映画の紹介に止まらず、労働―人生論としても示唆に富む。

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映画に寄り添って考える

『MORGEN』
06年4月号(No.59)「書評 &推薦図書」欄

評者:四木右左子

 誇りを持って仕事をするというのはどういうことか――映画に寄り添うかたちで考察した一冊である。
 在日韓国・朝鮮人が正面から描かれた画期的作品でもあるという『どたんば』。零細な坑山の落盤事故で救援に駆けつける他者の朝鮮人坑夫たちを通して、ぎ りぎりの信頼関係によってかろうじて苛烈な労働に耐えている人々と、それを支えている誇りが語られる。他の項で現代では伝わりづらくなっているとも著者は 述べているが、働くことの意味を考える上で大切な要素であることにかわりはないだろう。

 単純労働や肉体労働と現代的な意味での働く喜びにもふれられている。『深呼吸の必要』『掘るまいか』『クレールの刺繍』の三本はどうしても観たいと思っ た。映画評論家の佐藤忠男氏は、日本映画学校というユニークな実績をもつ専門学校の校長でもあるのだが、最後におかれた自身の青春と自立についての一文で は、仕事について誇りについて誠実に悩む若き日の姿が語られていて、心を打つ。

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