|
隠されたヒバクシャ 検証=裁きなきビキニ水爆被災 『東奥日報』(2005年7月12日) 広島、長崎への原爆投下から六十年。その節目の年に、原水爆禁止運動の原点となるビキニ水爆実験を検証する一冊が、二十−三十代の気鋭の研究者たちに よってまとめられた。 ビキニ水爆実験は一九五四年、米領マーシャル諸島ビキニ環礁で行われた史上最大級の核実験で、大量に降り注いだ死の灰によって、現地住民や日本のマグロ 漁船・第五福竜丸が被ばくしたことで知られる。 被災問題は経済的補償によって「完全決着済み」(米政府)とされるが、それに異を唱えているのが編著に当たったグローバルヒバクシャ研究会と、ビキニ問 題の先駆者として監修に当たった軍事研究家の前田哲男・東京国際大教授だ。 彼らは機密解除されたばかりの米公文書はじめ、現地調査で得た情報など膨大な資料を駆使。第五福竜丸事件について、米政府が情報コントロールによって世 論の沈静化を図った事実を浮き彫りにするほか、被災が爆心地から五百キロ以上離れたアイルック環礁にまで及ぶ新事実を明らかにする。また、被ばくは、がん などの健康被害だけにとどまるのか問いかける。 ●本書の内容を見る 『隠されたヒバク シャ』 |
|
隠されたヒバクシャ 検証=裁きなきビキニ水爆被災 『長崎平和研究』第20号(2005年10月31日) 発行:長崎平和研究所 (評者)伊藤和吉 〈抜粋〉 私は中学生頃から長崎で様々な平和活動にかかわってきて、現在でも大学で平和活動に取り組んでいる。なので、60年前に長崎に落とされた原爆については とても興味があり、知識も人並み以上あるつもりである。しかし、本書は私に衝撃を与えた。私は第五福竜丸事件を含むビキニ水爆実験がもたらした被害の実態 をこの本書で初めて知ったのである。これまでは、代表する第五福竜丸事件しか知らないで、「たまたまビキニ環礁の近くにいた漁船が被災してしまった」など と簡単に考えていた。そして、それを深く追求しようとしないまま本書を読む事になったのである。本書はそういった自分の甘い認識に警鐘を鳴らしてくれたの と同時に、マーシャル諸島のヒバクシャの存在を私に教えてくれたのである。(略) 第一章では、前田哲男氏が「ビキニ水爆被災の今日的意味」と題して、ビキニ水爆被災に至るまでの経緯やその被災が世界にもたらした影響について述べてい る。 (中略) 第二章の「第五福竜丸被災とアメリカ政府の対応」では、高橋博子氏が近年機密解除されたアメリカ公文書を駆使してその真相について迫っている。そこに は、アメリカが情報コントロールなどあらゆる手を使ってビキニ水爆被災をもみ消そうとしたことが克明にかたられ、日本政府もそれに乗じて、政治決着を図っ たことも明らかにされている。 (中略) 第三章の「塗り変えられる被災地図」では、竹峰誠一郎氏がこれまでアメリカが被災地域として認めてこなかったアイルック環礁に焦点を当てて、そこの住民 の苦しみや怒りを浮き彫りにしている。……アメリカ政府は、1986年にマーシャル諸島政府との間に発効した自由連合協定を盾にして、今のところ一切の補 償・賠償を拒否している。今でもアイルック環礁の住民は、アメリカ政府とたたかい続けているのである。 (中略) 第四章では、引き続き竹峰誠一郎氏が「ビバクは人間に何をもたらすのか」ということで、現地のヒバクシャやヒバク地の現在に迫っている。……「あの爆 弾」以前には見られなかった「新しい病気」が発生しているのだ。……それらの事実は、私達に病気の有無や放射線量だけではなく、人文科学や社会科学も含め た多面的かつ総合的な分析視角が不可欠であると指摘しているのである。 最後の第五章「挑戦するロンゲラップの人びと」では、中原聖乃氏が故郷から移住を強いられているロンゲラップ環礁出身者に焦点を当て、困難な生活を生き 抜きながら超大国アメリカに対して行ってきた行動に対して光を当てている。 冒頭にも記した通り私は本書にすごい衝撃を受けた。第二次世界大戦を終えた後でさえ、マーシャル諸島は、国連憲章という平和の象徴であるべきものと、核 兵器という恐怖の象徴を利用したアメリカに、植民地の様に勝手にされていたかと思うととてもやるせない気持ちになる。…… 私も知らなかったように、今の若者は一切、マーシャル諸島の住民がヒバクしたことを知らないであろう。ヒバクしたのは広島と長崎だけであると思っている 人は多いと思われる。しかし、ビキニ環礁の水爆実験によるマーシャル諸島のヒバクシャの被害がヒロシマ・ナガサキのヒバクシャに劣るものではほとんどな く、現在まで苦しみを背負い続けているという点は全く同じなのである。そういった事実は核兵器の廃絶を訴えていく上でとても重要なものであると思うので、 ぜひ本書を読んで「グローバルヒバクシャ」の存在を知ってもらいたい。特に次の世代を担う若者にはぜひとも薦めたい。(県立長崎シーボルト大学学生) ●本書の内容を見る 『隠されたヒバク シャ』 |
|
ビキニ水爆の実態探る論文集 『中國新聞』(2005年6月29日) 米国が一九五四年に太平洋マーシャル諸島で実施したビキニ水爆実験について調べている「グローバルヒバクシャ研究会」の若手研究者たちが三十日、住民の 健康被害や日米両政府の対応などを探った論文集「隠されたヒバクシャ 検証=裁きなきビキニ水爆被災」を凱風社(東京都文京区)から刊行する。 著者の一人、広島市立大広島平和研究所の高橋博子助手=米国史=は、機密解除された米公文書を入手。実験で「死の灰」を浴びたマグロ漁船「第五福竜丸」 の乗組員に、米政府が連邦議会の審議を経ずに見舞金を支払ったことを示す文書を紹介し、「被害の実態が明らかになる以前に、迅速に和解しようとした」と指 摘している。 日本政府が汚染されたマグロ調査を打ち切った背景に、米政府が関与していたことを示唆する関係者の書簡も掲載した。 このほか、マーシャル諸島を訪れた早稲田大大学院生の竹峰誠一郎さんは、住民の証言や健康影響調査の結果について執筆。中京大の中原聖乃非常勤講師も、 実験により移住を強いられた住民の生活実態を報告した。監修した東京国際大の前田哲男教授は「ビキニ水爆被災の今日的意味」と題して寄稿している。 ●本書の内容を見る 『隠されたヒバク シャ』 ――『中國新聞』 |
![]() |
| 戻る |