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『密漁の海で 正史に残らない北方領土』 『北海道新聞』(2004年8月1日)「ほっかいどうの本」 ●評者:中舘寛隆(北海道読書新聞社編集長) 戦後から約六十年を経たいまも、北方領土問題は解決されていない。根室半島納沙布岬から最も近い歯舞諸島貝殻島の距離はわずか三・七キロ。目の前に豊かな漁場が広がっている。占領されたまま日ロの国境が画定されていないがゆえに、この海では拿捕(だほ)と密漁が繰り返されてきた。 本書はこれらの出来事の裏側や、そこで暗躍してきた人びとを追ったドキュメントである。著者は根室支局、ハバロフスク駐在、モスクワ駐在などの経験をもつ北海道新聞小樽報道部次長。 裏の主役たちを中心に、本書には北の海を舞台に繰り広げられた、ドラマの役者たちが数多く登場する。拿捕を逃れるため登場したレポ船と、元締めである北海の大統領、オホーツクの帝王などと呼ばれた人物たちの存在。特攻船や密漁に絡む暴力団幹部たち。ソ連崩壊後に力を増したロシアの密漁船と、ビジネスとして仕切る水産マフィア。そして彼らと癒着する国境警備隊。さらには、ムネオスキャンダルをめぐり暗躍した政治家や外務官僚たち。 なかでも注目したのはレポ船にかかわる部分である。情報提供の見返りに密漁を許されたレポ船は、やがてベトナム反戦米兵を脱出させる役割も担った。いわゆるジャテック事件だが、本書には米軍が送り込んだスパイのことなど、これまで隠されていた事実も明らかにされている。 ほかにもムネオスキャンダルをめぐる動きなど、綿密な取材をもとにまとめられた本書からは、旧ソ連時代から現在にいたる、日ロ両国の歴史の暗部が浮き彫りにされていて、興味は尽きない。 ●本の内容を見る密漁の海で |
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迫力のある日露関係裏面史 『産経新聞』(2004年7月25日) ●評者:正論調査室長 齋藤勉 来年は終戦六十年。スターリンが不法占拠した「北方領土」問題も還暦を迎える。この間、日本の「四島返還」を求める対ソ(対露)領土交渉の裏で、四島の現場一帯では大方の国民に知られることなく、奇怪で不穏かつ不気味な蠢(うごめ)きが絶え間なく進行していた。 本書は「正史に残らない北方領土」のサブタイトル通り、一九八〇年代後半から一貫して領土問題を取材してきた北海道新聞記者の著者が「国境の海」で起きた数々の事件と、そこに登場し消えていった人々を追跡した克明な記録である。推理小説のような読み応えだ。 ソ連側に軍事分野を含む秘密情報を提供する見返りに、ソ連が主張する領海内での漁を許された日本漁船は「レポ船」として知られたが、その元締めに「北海の大統領」の異名を取る石本登という男がいた。根室生まれだが、戦前、父親が全財産を売り払って移住した樺太で警察官になり、終戦前日、たまたま出張で渡った稚内に引き揚げた。やがて故郷・根室に移り、レポ船長としてソ連側から重用され、元樺太庁長官や米国人と関係ある女性の情報収集、さらには自衛隊の下級幹部の買収まで指令されていたという。 一九五三年夏、一人の日本人がソ連から密航してきて逮捕された。戦前、これも樺太に渡ったあと北海道・利尻島の戸籍から抹消され、ソ連のスパイになった関三次郎という元漁師だった。関が持っていた二重底のトランクからは懐中時計や身の回り品に加え、暗号組み立て表とみられる五ケタの乱数表百枚などが出てきた。拉致事件の実行犯の北朝鮮工作員をほうふつとさせる逸話ではないか。 終戦直後からベトナム戦争、ソ連軍のアフガニスタン侵攻、ソ連崩壊、そして鈴木宗男氏の日本の大臣(北海道・沖縄開発庁長官)として初の北方領土訪問から失脚……と時代の節目に沿って連綿と紹介される特異な事件の流れは、戦後の日露関係裏面史としても迫力がある。 ●本の内容を見る密漁の海で |
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密漁の海で 正史に残らない北方領土 『出版ニュース』(2004年8月上旬号) 北方領土と向き合う納沙布周辺の海域は、日本の海上保安庁の巡視船やロシアの国境警備隊の警備艇が行き交い、その合間を縫ってレポ船や特攻船と呼ばれる密漁船が駆け抜けた密漁の舞台でもあった。 密漁で得たカニやウニはロシアの水産マフィアや日本の暴力団が仕切り、そこで生まれた利益の一部は国境警備隊の幹部にも還流していた。本書は、このような密漁ビジネスの実態を描くノンフィクション。ここには[編集部注:「ここには」とは、密漁ビジネスの現場に特定した意味ではなく、北方四島という現場のこと]前衆議院議員・鈴木宗男や異能の外交官と呼ばれた元外務省主席分析官・佐藤優の姿があったことを北海道新聞の記者である著者は見逃さず、彼らの暗躍ぶりをも克明に記し、ムネオスキャンダルの核心にまで迫っていく。 ●本の内容を見る密漁の海で |
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密漁の海で 正史に残らない北方領土 『信濃毎日新聞』(2004年7月4日) 『山形新聞』(2004年月7月4日) 戦後60年近くたった今なお、未解決のまま残された北方領土問題。その最前線に位置する根室半島納沙布岬と歯舞諸島は、わずか3.7キロしか離れていない。新聞記者として領土問題を見続けてきた著者が、「国境の海」に登場しては消えていった人々を追ったドキュメント。 情報の見返りに密漁を許されたレポ船、ビジネスを取り仕切る水産マフィアたち、利権に群がる政治家など。政治と国策が揺れ動く中で“愛国者”“国賊”と呼ばれた彼らに、豊かな海がほんろうされるさまを描く。 ●本の内容を見る密漁の海で |
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