ポーランド映画史・書評


ポーランド映画史

『出版ニュース』(2006年9月上旬号)

●「情報区」

 灰とダイヤモンド、地下水道、尼僧ヨアンナ、大理石の男、トリコロールなど、ポーランドは日本の映画ファンにとっても記憶に残る映画を数多く製作してき た。しかしポーランド映画を包括する研究書となると皆無という。マレク・ハルトフ著『ポーランド映画史』(A5判・521頁・6000円+税・西野常夫/ 渡辺克義訳)はポーランド映画百年の歩みを系統的に考察したもので、ポーランド研究には書かせない一書となろう。

 ポーランドは日本など他国と同様に19世紀末に映画が紹介されたが、歴史上、分割統治をなんども経験させられてきたことから映画の歴史もかなり特異な経 験を経てきている。

 本書はトーキー以前のポーランド映画に遡って年代順に追う。時代区分が大体においてポーランドで起きた政治的変革に沿っている――この著者の言葉にポー ランド映画の特徴の一つが集約されている。

 第3、4章は第2次世界大戦後の時期が対象。1945年―48年の映画国有化の始まり、続くスターリン主義時代の社会主義リアリズムの映画についてで、 映画と政治との密接なつながりを詳述。

 アンジェイ・ワイダ、クシシュトフ・キェシロフスキはそれぞれ項目を設けてとりあげている。

 かつてベルイマンは「最も優れた」現代映画5本の一つにキェシロフスキの『デカローグ』をあげた。そのキェシロフスキ映画が90年代の芸術映画に与えた 影響は、セルジオ・レオーネのマカロニ・ウエスタンが1960年代の西部劇に与えたものと同程度の重みがあると述べる。

 またそれぞれの作品についての分析も読みごたえがある。

 翻訳にあたって映画題名索引や人名索引を充実させ、注釈を加えるなど読者の便宜をはかっている。

 余談だが、全編ポーランド語で語られる珍しい邦画がある。押井守監督の「アヴァロン」(01年)である。

●本の内容を見る
ポーランド映画史



戻る